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ざっくばらんに書きます

「自衛官になる」ということ・・・自衛官を志すあなたに読んで欲しい

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東日本大震災後、自衛隊に対する国民の評価は絶大で、このことをほとんど全ての自衛官が誇りに思っている。そしてこれを受けて自衛官を志す人が増加したのは間違いのないことであろう。

自衛隊の平時の業務とは、いつか起こる国の危機のためにひたすら準備を続けることであり、その原動力となるのは家に帰ったら待っている家族の笑顔や街に流れる平凡な日常を守りたい、というようなのっぴきならぬ使命感なのである。

 さて、筆者が自衛官だった頃、同期が自衛官を志した理由を聞いてみると、本当に様々なものがあった。パイロットになりたかったから。運動が好きだから。間違いなく自分を高められる職場だから。その他にもたくさんの理由があり、これらは全て間違いではなく、自衛官を志すには十分な動機である。筆者もパイロットを志して自衛官に任官した。航空身体適正が無かったためその道は閉ざされたが。

先日、某学生集団のメンバーで就職活動の厳しさと自衛隊を志す動機を関連させた発言をした方が居た。私は別にそんな動機でも十分だと思っている。がしかし、自衛官になるための門は今も昔も狭き門なのは変わりないが

下手な因子を組織に入れてしまうとそれだけで自衛隊としての戦力は一気に落ちてしまうこともある。私のいた航空自衛隊では、自組織のことを「掛け算の組織」と呼んでいた。つまり、航空自衛隊を構成する各戦力を数値として捉えた時、どこかしらの数値が低い値となったり、あるいはゼロとなった時、航空自衛隊の戦力が十分に発揮されなくなってしまうのである。これは人的戦力として捉えた時も間違いなく同じことが言えるだろう。

言っておくが、自衛隊の訓練はキツい。間違いなくキツい。これは想像に難くない体力面について言うまでもないことであるが、精神面においても耐え難い局面が生じることもある。入隊時、それまでどんな経験をしてきた人でも、どんなに身体を鍛えてきた人でも、間違いなく自分が試される場面が必ず出てくる。それは自衛隊という組織で国を守っている以上、仲間同士で助け合わなければならないからである。自分だけできていても意味が無い。そして訓練はそういうふうに、誰もが苦しい局面を迎えることが出来るように作られている。

入隊してから最初の方は、そうやって自分が高められる実感があるから、とか、パイロットへの道が近づいているような気がして、とか、当初自分が持っていた動機が満たされていくような気がすることで毎日の訓練や業務を乗り越えていくことが出来るだろう。しかしそのうち、誰もが共通して大きな壁を目の当たりにすることになる。

 

「自分はこの先、自衛官を続けて人生を国に捧げることになってもいいのだろうか。」

 

これである。つまりこれこそが、真の「志」に繋がる大きな問いなのである。

この壁を迎えるのは個によってまちまちかも知れない。

それは各種昇任試験を突破した時かもしれない。あるいは防衛大学校を卒業して、いよいよ自衛官に任官する時かもしれない。あるいはそもそも就職活動の時にこの問にぶつかることが出来る人も居るかもしれない。その人は幸せである。きつい訓練中にこれにぶつかる人も少なく無いだろう。

自衛官という職は給料の面で見れば安定である。これは間違いない。なぜなら特別職ではあるが国家公務員だからである。福利厚生も私企業に比べて圧倒的に充実しており、もちろん退職後のサポートも堅い。

だが、定年である55歳まで、あるいは階級が高ければ60歳まで、その「安定しているから」という理由だけで自衛官を続けられるだろうか。次にいつ掛るか分からない非常呼集に備え、常に万全の体制を個人としても部隊としても取り続ける。民間の方に評価されることなんて滅多にないが、いつそんな状況になっても実力を遺憾なく発揮できるように自らと対話しながら訓練に励む。こんなことは「俺、私が国を守るんだ」という堅固な使命感が無ければ到底ムリな話である。いや、本当に無理なのだ。この使命感がなければ自分が追い込まれた時、ぐうの音も出ない。これは筆者が体験したことなのである。

この使命感を持てるか持てないか、これはまさに先程の「問い」が大きく関わってくるのである。

最初はどんな動機でも構わないだろう。それまでにどんなバックグラウンドを抱えていてもいいだろう。入隊したからには皆仲間。誰もが温かく受け入れてくれる。そして共に切磋琢磨し、いつかはあなたが誰かを助けられる存在になれるだろう。だが、入隊した当初は気づけなかったこと、気付いていたが真の問いかけに達していなかっただろうあなたは、間違いなく先程の問いに魂としてぶつかることになる。自分がそれにぶつかった時、あの言い表しにくい焦燥感というか、期待と後悔が入り混じった感情というか、とにかく落ち着けない日々が訪れた時の「魂がこの問いにぶつかっている」とも言えるような感覚に襲われたのは、パイロットの身体適性を失った時であった。

 

これを読んでいるあなたが、もし自衛官を志すのであれば、あなたは先の問いを事前に知ることが出来たのである。

 

「自分はこの先、自衛官を続けて人生を国に捧げることになってもいいのだろうか。」

 

 

この問に魂としてぶつかる事ができるのは、実際に入隊して苦しい局面を何度も乗り越え、人それぞれの「節目」を迎えた時のみであろう。だがしかし、入隊する前のあなたに、少しでも考えてみてほしい。

災害派遣」は自衛隊の任務の一つではあるが、主となる任務は「国防」である。いつ訪れるか分からない国の危機に立ち向かうべく、自衛隊は今日も様々な形で「準備」を進めている。誰に評価されることも期待せず。